5. 真空採血器具関連
リスク
 採血には様々な器具が用いられているが、JES2018で集計された「静脈採血」時の針刺し切創は全体の12.1%(977/8,082件)であり、主な原因器材は「翼状針(63.8%)」、「使い捨ての注射器の針(23.9%)」、「真空採血セットの針(6.3%) 」であった。採血に用いる注射針は、口径が大きく血液を吸い上げていることが多く、採血関連の針刺しに伴う血液媒介病原体の伝播リスクは比較的高い(文献リンク)。
 真空採血セットの針による針刺し切創は原因器材全体の0.8%(73/8,733件)と多くはないが、血液を吸い上げた中空針による受傷のため、血液媒介病原体への伝播リスクが高い行為である。発生場所は半数以上が「病室(56.2%)」であり、「中央採血処置室(15.1%)」や「病室外 (13.7%)」でも発生している。
 発生状況は、「器材を患者に使用中(24.7%)」、「廃棄容器に入れる時(16.4%)」、「器材の分解時(15.1%)」、「使用後廃棄するまでの間(12.3%)」の順多く、他の原因器材と比べると器材の分解時の受傷リスクが高い。
 また、JES2018の記述文の解析により、「真空採血セット」による針刺しの33%はゴムスリーブの針による受傷であった。「真空採血セット」による針刺し切創は、血管に刺入する針(前方針)だけでなく、真空採血セットに刺入されるゴムスリーブ内部にある後方針による受傷リスクがあり、採血後は両針とも内腔に血液を含んでいる可能性が高いため、この特性を理解し対策を発展させることが求められる。
※JES2018:Japan EPINet Surveillance 2018(2015~2017年度、3か年データ、82施設)

対策
  • 採血後にはリキャップを禁止する。
  • 採血に用いた針を真空採血セットから取り外す等の器材の分解を禁止する。
  • 鋭利器材専用の廃棄容器を採血場所に設置する。もしくは携行用廃棄容器を持参し、採血時には作業者の手の届く範囲に置く。
  • 採血には、針刺し損傷防止機構付きの真空採血器具を利用する。たとえば、真空採血セットのシールド付き、または蝶番キャップ付き注射針など針刺し損傷防止機構付きの採血針を標準装備した器材の利用、耐破損性のプラスチック製真空採血管/ スピッツの採用などである。
  • 使い捨て注射器の針を用いて真空採血管/ スピッツに血液を注入することは、危険を伴うため避ける。移し替えの際は、採取血液をスピッツに注入する際に針を遮蔽する筒状の鞘のついた注射針付きシリンジを利用する。
  • 血液培養検査では培地接種前に針を交換しない。直接真空採血できる血液培養セットを用いる。
 
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