2. 薬剤充填済み注射器/プレフィルドシリンジの針(ペン型注入器用注射針等)
リスク
 薬剤充填済み注射器/プレフィルドシリンジの針(ペン型注入器用注射針など)による針刺し切創事例はJES2018では全器材の8.1%(711/8,733件)で、「使い捨て注射器の針」、「縫合針」、「翼状針」に次いで4番目に多い原因器材となっている。原因器材の詳細や記述データの分析から、このうち「ペン型インスリン注入器用注射針」による事例が全体の90.4%と大部分を占めていた。
 発生場所は、「病室(53.2%)」、「廊下/ナースステーション/処置室等の病棟病室外(34.2%)」で全体の8割以上を占め、受傷した職種は「看護師」が83.4%と大部分であったが、次に多い職種が「清掃・洗濯・廃棄関連などの業務士(4.8%)」と報告されているのが特有である。
 発生状況は、「器材の分解時(19.4%)」が最も多く、次いで「使用済み器材が床・テーブル・ベット等の上に放置されていた際の受傷(17.7%)」が多いことがこの器材特有の状況である。また「リキャップ」時の事例も10.8%と多い。
 このカテゴリー(薬剤充填済み注射器/プレフィルドシリンジの針)の器材による針刺し切創の大部分は、薬剤充填カートリッジを複数回使用するために使用後針を取り外す必要がある「ペン型注入器用注射針」であった。これらはリキャップ禁止や器材の分解あるいは取り外し機能のついた耐貫通性廃棄容器の適切使用だけでは防止効果は十分でないかもしれない。JES2018でも使用後の針を取り外す補助器具による針刺し切創が40件以上確認されている。これらの取り外し器具は、鋭利器材と一体化された針先を保護する機構をもつ安全器材ではなく、針の安全な取り外し、針の安全な廃棄という作業管理が必要とされるため推奨されない。
 近年、抗がん剤やワクチン、生物学的製剤等については、注射用キット製品としてのプレフィルドシリンジに針刺し損傷防止機構付き注射針器材を標準としているものが多く市販されている。また、ペン型注入器用注射針などでも安全な針の取り外しを可能とする針刺し損傷防止機構付き器材が開発されている。このような安全器材を医療現場で選択し活用できるよう市場に多く出回ることが期待されるとともに、医療機関で採用することが推奨される。
※JES2018:Japan EPINet Surveillance 2018(2015~2017年度、3か年データ、82施設)

対策
  • 「リキャップ」を原則として禁止し、針の取り外しが必要とされるタイプのペン型注入器用注射針については、針刺し損傷防止に配慮した安全器材を活用する。
  • 注射用キット製品としての薬剤充填済み注射器/プレフィルドシリンジに、針刺し損傷防止機構付き注射針を標準装備しているものを選択する。
  • 使い捨ての薬剤充填済み注射器は、「リキャップ」を原則として禁止し、専用の廃棄容器等を適切に配置するとともに、針刺しの防止に配慮した安全器材を活用する。

 
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