滅菌ガウンの適性使用ガイド
医療関連感染防止のために、 ガウンに求められる機能に関する項目として、 次のようなガイドラインがあります。
『濡れても滲みこまないで、手術野の清潔の保てる素材のガウンや覆布を使用する』
※「手術医療の実践ガイドライン」(日本手術医学会)
『処置中及び患者のケア中に、血液、体液、分泌物または排泄物との接触が予測されるときには、皮膚を保護し、衣服の汚れや汚染を予防するために、業務に適しているガウンを着用する』
※「隔離予防のためのガイドライン2007 年度版」(CDC)
CDC:Centers for Disease Control and prevention 米国疾病管理予防センター

手術用ガウンが手術中に感染に関わる要素として、次のことが挙げられます

医療従事者(着用者)に対して
●着用中に、ガウンの内側に液体が染みてしまう
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バリアー性の高いガウンほど、液体が浸透するリスクが小さくなります。

患者さんに対して
●医療従事者の汗が術野にさらされる
一般的に一日に出る汗の量は約 0.5リットルですが、運動や緊張等により、最大で10 倍程度の汗をかくことがあるといわれています。通常は水蒸気(粒径:約 3×10-10m)となって発散されますが、量によっては水滴となり、感染の原因になる可能性が考えられます。
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バリアー性の高いガウンほど、汗が内側から術野に浸透するリスクが小さくなります。
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着用快適性の高いガウンを着用すれば、汗をかきにくくなります。

●ガウン自体から発生する繊維が術野にさらされる
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繊維が浮遊しづらい長繊維、低発塵性の素材を使用することで、リ スクを低減することができます。

●医療従事者の皮膚落屑等が術野にさらされる
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皮膚落屑よりも目の細かい一般的な不織布ガウンを着用することで、リ スクを最小にすることができます。

また、それぞれの手術における、術野の清潔度や感染リスクに応じたガウンを選定するのが望ましいといえます。その事例をいくつかご紹介します。

〇創分類の清潔度が高い手術(整形外科、心臓外科、脳外科)は、交差感染にシビアである。
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低発塵性、高バリアのガウンを使用することで、感染のリスクを低減することができます。

〇インプラント手術(人工骨頭、ペースメーカーなど )は、交差感染にシビアである。
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低発塵性、高バリアのガウンを使用することで、感染のリスクを低減することができます。

〇手術時間が長い方が感染リスクが高い。
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高バリアのガウンを使用することで、感染のリスクを低減できます。

〇感染性疾患(HIV、HCV など)患者の手術は、術者が曝露した際の感染リスクが高い。
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高バリアのガウンを使用することで、感染のリスクを低減できます。

〇腹腔鏡下手術は、閉鎖系で行われており、腹膜を通過しているため、一般的に感染のリスクは少ない。
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汎用的な手術用ガウンで、感染のリスクを低減できます。

surgicalmask
手術用ガウンに起因する感染を防ぐためには、用途に合わせたガウンの選定が必要であり、特にバリアー性が重要となります。
手術用ガウンのバリアー性を区分する基準として、AAMIによる規格(PB70)があります。
AAMI:Association for the A dvancement of Medical Instrumentation 米国医科器械振興会

ガウン製品のエリア分け

surgicalmask
 ガウン製品としてのAMMI PB70レベルは、クリティカルゾーン(エリアA、B)である、前面胴体部分、袖部分のバリアー性によって決定されます。
 クリティカルゾーン以外の前面部分(エリアC)は最低限のバリアー性(レベル1 以上)で良く、後ろ身頃部分(エリアD)のバリアー性は必要ないとされて います。

試験方法

衝撃耐水性(ウォーターインパクト法)
AATCC42 / JIS L 1912
 スプレーによるファブリックに対する水の衝突時の浸透性を測定する試験方法。サンプル(この場合ガウン素材)の下に敷いたろ紙への水の透過量を測定する試験方法で、数値が低い方が目が細かい(または防水)という評価になります。
surgicalmask

耐水性
AATCC127 / JIS L 1912
静水圧下においてファブリックに対する水の浸透性を測定する試験方法。サンプルの表面において、3つ目の水滴が現れた水圧を記録します。高い値ほど良い。
surgicalmask

人工血液による浸透に対する抵抗性の試験方法
ASTM F1670 / JIS T 8060
防護服衣服素材の合成血液による侵入に対する抵抗性のための標準検査法。

Phi-X174 バクテリオファージによる血液媒介性病原体の浸透に対する抵抗性の試験方法
ASTM F1671 / JIS T 8061
Phi-X174殺菌ウイルスの侵入を用いる防護用衣服素材の血液媒介性病原体の侵入に対する抵抗性のための標準検査法。
surgicalmask

第1ステップ:人工血液が14KPa の圧力下で試験片を浸透するかのチェック(合格/ 不合格)
     -合格品のみ第2 ステップへ
第2ステップ:試験用のウイルスを使用し、14KPa の圧力下で浸透するかのチェック(合格/ 不合格)


滅菌ガウンの種類と選定基準

AAMI
PB70レベル
AAMI
要求データ
※P35 に試験方法を記載
対象製品 臨床上の適用範囲(目安)※
種類 素材構造 出血などの液体量 手術時間 その他 広い














狭い
4 ASTM F1671(JIS T 8061A法)合格 gown_table_4_1 バリガードガウンフィルムを含む三層構造の防水ガウンです。背中部分は通気性がある不織布を使用しています。 gown_table_4_2 限定なし 限定なし 限定なし
3 衝撃耐水圧≦1.0g 耐水圧≧500mmH₂O gown_table_3_1サーレムガウン(Nタイプ)長繊維不織布のガウンです。撥アルコール性、通気性があります。 gown_table_3_2 500ml以下 4 時間以内 手術中の発汗量:アンダーウェアで吸収できる程度
gown_table_3_3 スープレルガウン長繊維不織布のガウンです。撥アルコール性、通気性があります。 gown_table_3_4
2 衝撃耐水圧≦1.0g 耐水圧≧200mmH₂O gown_table_2_1 サーレムガウン(K、Fタイプ)サーレムガウン(N タイプ)に対して、より快適性を追及したタイプです。 gown_table_2_2 200ml以下 2 時間以内または腹腔鏡下手術 手術中の発汗量:アンダーウェアで吸収できる程度
gown_table_2_3 ソンタラガウン短繊維不織布のガウンです。撥アルコール性、通気性があり、布に近い風合いを持っています。 gown_table_2_4
1 衝撃耐水圧≦4.5g 該当製品なし

※手技上の適用範囲に示す液体量、手術時間当の条件はあくまで目安です。
 「滅菌ガウンの適性使用ガイド」に示す事例を参考に、術野の清潔度、感染リスクに応じたガウンの選定をお願いします