4. 静脈留置針
リスク
 静脈留置針の内針(スタイレット) は、口径が大きく血液を吸い上げているため、針刺しに伴う血液媒介病原体の伝播リスクは比較的高い。米国での職業性HIV伝播のいくつかの例は静脈留置針の内針が原因と報告されている(文献リンク)。
 JES2018で集計された静脈留置針による針刺し切創は全体の5%(437/8,733件)で、受傷した職種は「看護師(53.0%)」、「医師(21.6%)」、「研修医(18.3%)」の順に多い。
 発生場所は、「病室(38.9%)」が最も多いが、「放射線・内視鏡・筋電図等の特殊検査処置室(12.0%)」、「手術部(10.8%)」、「救急部門(9.0%)」、「病室外(8.3%)」、「外来処置室(8.0%)」でも発生している。静脈確保が必要な場面は病院施設内に数多くあるため、それらの全ての場所に針刺しリスクがある。
 発生状況は、「器材を患者に使用中(患者の動作による受傷、翼状針・点滴針等の抜針・止血時、及び患者の抑制介助時を含む)(29.5%)」が最も多く、介助者も負傷しやすいことが特徴である。また、「使用後から廃棄するまでの間」、「廃棄ボックスに器材を入れる時」もそれぞれ16.4%と多発している。なお、静脈留置針による針刺し事例の日米比較研究から、日本では静脈留置針による足への針刺し受傷が多いことが知られている(文献リンク)。これは、静脈確保時に作業者の手の届く範囲に廃棄容器がない、介助者が使用後の針を手渡しで受け取るなどの静脈確保時の作業習慣や足の保護具の整備不十分などが影響している。
 2004 年4 月から針刺し損傷防止機構付きの静脈留置針は従来器材より償還価格が高く設定されているが、静脈留置針の安全器材による針刺し切創割合は52.6%である。2017年度の10万本使用あたりの針刺し切創発生件数は3.2件であり、近年では減少が見られていないことから(JES2018)、さらなる安全器材の普及による針刺し切創の減少が期待される。
※JES2018:Japan EPINet Surveillance 2018(2015~2017年度、3か年データ、82施設)

対策
  • リキャップ禁止を徹底し、抜針後すぐに廃棄できる廃棄容器を活用する。
  • 血管確保直後、処置の合間、リキャップ、針を廃棄するまでの片付け時の針刺しが多いことから、抜針と同時に針先が保護される機能のついた安全器材を利用する。製品によって、内針全体が保護されるものと、先端のみが保護されるものがある。
  • 安全機能の作動様式には能動的と受動的なものなど様々なものがあるため、安全器材の使い方について作業者に訓練する。針刺し損傷防止機構付き静脈留置針を使用したからと言って針刺しリスクがゼロになるわけではなく、器材ごと、使用方法ごとで針刺しリスク低減効果が異なることもありうる。
  • 使用後の静脈留置針の内針を手渡ししない。作業介助者は、作業者が廃棄しやすいように廃棄容器の設置等を補助し、使用者が直接廃棄できる環境を整える。
  • 「使用者廃棄の原則(針を使用した人が最後まで責任持って捨てる)」を守る。
  • 静脈血管確保時/抜針する前に、あらかじめ固定テープ等を準備し、近くに廃棄容器があるか確認を行なった上で静脈確保の処置を行なう。

 
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