10. 透析関連器具
リスク
 透析室で発生した針刺し切創はJES2018の集計では0.6%(52/8,752件)である。原因器材は「使い捨て注射器の針(26.9%)」、「静脈留置針(15.4%)」、「その他の中空針(15.4%)」が主な器材であった。透析関連器具での針刺し切創は、エピネット日本版の各設問のその他記載や自由記述から、シャント血管確保に関連した受傷や、透析回路への接続に関連した受傷など、透析実施に関連した受傷がより多く発生している。 また、透析室では日常的にシャント(動脈側・静脈側)からの穿刺、血液回路への接続等の観血処置が行われており、交差感染のリスクも高いことから、標準予防策を徹底することが重要である。
 血液透析用に用いられる針は中空針で、径が大きく、針刺し発生時に曝露される血液量が多い。また、日本の透析室ではC 型肝炎ウイルスが陽性の患者の割合も高く、受傷した際の職業性肝炎の発生リスクは他の針刺しに比べ相対的に高いことが示唆される。今後、透析に関連した針刺し切創の原因器材や発生段階などのメカニズムを明確にし、対策を発展していくことが求められる。
※JES2018:Japan EPINet Surveillance 2018(2015~2017年度、3か年データ、82施設)

対策
  • リキャップは禁止する。
  • シャント穿刺場所の近くに廃棄容器を設置する。もしくは、シャントへの血管確保後に穿刺針の内筒針をすぐに捨てられる携行用廃棄容器を利用する。
  • 針刺し損傷防止機構付きの血液透析用シャント穿刺針を利用する。針がシャントから引き抜く際に保護目的の筐体内に収納されるタイプ、シャントから針を引き抜く際に針に覆い被せる保護ケースをもつタイプ等がある。
  • 使用後の鋭利器材をトレイに入れて処理する際には、手を使わずにセッシ等を用いる。

 
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