輸液接続システム
「静脈ラインの接続、および静脈ラインのインジェクションサイト(ゴム管・ゴム栓)への接続に用いた針」による受傷はJES2018
※の集計では全体の2.2%(177/8,032件)であった。「点滴ラインの接続・増設に用いた針」は全原因器材の0.9%(82/8,032件)報告されており、その半数は「病室内」で発生していた。
静脈ラインへの接続等に金属針を用いると、医療従事者の針刺しが生ずるだけでなく、静脈内ポートで針が折れたり、静脈ポートから針を取り出す際に静脈ラインに意図しない接続離脱が起こったりすることがあり、いずれの場合も患者にとって重篤な結果となる。一般的に静脈ラインへの接続に用いた針での受傷は問題となるほどの量のウイルス量を伝播することは少ないとされるが、米国でHIV に感染した看護師1 名は、患者の体近くのヘパリンロックに接続した金属針による間欠的静脈内投与実施時での受傷が感染原因であり、この患者では静脈ラインへの血液の逆流が起こっていた。
また、輸液接続システムが患者に利用されている場合、ルート内部はダイレクトに患者の体内とつながっており、感染バリアが全くない状態である。適切な閉鎖式の輸液接続システムは感染管理の点からもその利用が推奨される。
※JES2018:Japan EPINet Surveillance 2018(2015~2017年度、3か年データ、82施設)
- 輸液接続システムにおいて、可能な限り不要な金属針の使用を禁止する。
- 鋭利器材を使わない輸液システムには、1) バルブ式アクセスポートおよびコネクター、2) 先端が鈍なカニューラが使用可能な隔壁をもったコネクター、3) 陥凹し保護された形状の針コネクターなどがある。器材の選択の際には、感染管理の視点を勘案し、既存の輸液システムとの適合性を評価して採用する。輸液システムに使用するパーツの数が少ないほど単純となり、システムの安全性が向上する。
- 注射器に金属針をつけたものは静脈または動脈ラインからの採血に用いるべきではなく、代わりに金属針のついていない針刺し損傷防止の配慮がされた器材を用いる。
- ヘパリンロック等の間欠的静脈内投与が必要な輸液システムの際にも不要な金属針の使用を禁止する。
- 点滴ボトルへの薬液注入時などは、鋭利器材でないプラスチック針の利用を推奨する。プラスチック針は薬液のミキシング時にも利用できる。