8. 皮膚穿刺器具
リスク
 「耳介・指・足底等の穿刺」時の針刺し切創事例はJES2018の集計では全体の1.0%(80/8,082件)である。原因器材は「ランセット」が41.8%と最も多く、「使い捨て注射器の針」が26.6%であった。
 「ランセット」による針刺し切創はJESが開始された2004年度は原因器材の4.2%を占めていたが、2006年以降年々減少が見られ2017年度は0.3%であった。ランセットの安全器材による受傷割合は55.6%であり、安全機構を作動後の受傷が75%と高い割合で発生している。使用する安全器材の針刺し損傷防止機構を再確認し、作動後に多発している原因を追究することが求められる。
 「使い捨て注射器の針」による受傷については、血糖測定等の採血目的で皮膚穿刺に注射針を利用する慣行が残っており、穿刺に利用した注射針のリキャップ時や廃棄時に針刺しが多発している。「トレイの中でキャップが外れていて受傷した」、「廃棄容器がなかったので取りあえずトレイの中に入れておき、別の物を取ろうとしたときに針刺しした」、などの事例が報告されている。これらはいずれも適切な廃棄処理を行なうか、安全機構のついたランセットを使用することで大部分は予防できる。
 なお、指穿刺用/heel-stick 用ランセットは血糖測定の際や、乳幼児の採血、耳介・指・足底等の穿刺のために利用される特別な医療器具である。
※JES2018:Japan EPINet Surveillance 2018(2015~2017年度、3か年データ、82施設)

対策
  • 耳介・指・足底等の皮膚穿刺には注射針(18G針や23G針)を使用しない。
  • 自動引き込み型などの針刺し損傷防止機構のついた穿刺用ランセットを利用する。再使用できない単回使用の自己内包引き込み型のランセットは、複数の患者の検査を次々と行う場合に交差感染の可能性を最小限に抑えることができる。また、廃棄にあたって鋭利部の露出部がなく、安全に廃棄できる。
  • 皮膚穿刺時には、実施者の手の届く範囲内に耐貫通性廃棄容器を備えておく。血糖測定などルーチンで行なわれる業務の際には、作業者の使い勝手のよいように、皮膚穿刺用器材や廃棄容器が一体となったトレイセットなどをあらかじめ準備しておく。

 
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