9. 縫合針
リスク
 「縫合針」による針刺し切創はJES2018の集計では原因器材の18%(1,570/8,733件)を占める。これは「使い捨て注射器の針」に次いで2番目に多い原因器材であり、近年、縫合針による受傷をどのように減らすべきか、最も注目されている。
 発生場所は、「手術部(79.2%)」が縫合針の受傷の8割を占めるが、他には「外来処置室(6.1%)」、「救急部門(2.9%)」、「特殊検査室(2.9%)」、「集中治療室(2%)」などでも報告されている。
 受傷した職種は、「医師(43.9%)」、「看護師(30.9%)」、「研修医(17.5%)」の順に多い。発生状況は、約半数が「縫合中(51.7%)」で、「器材の受け渡し時(25.3%)」にも多い。また、34.2%が「他者が持っていた器材で受傷」しており、針刺し切創原因器材の中で、他者による受傷割合が最も高い。
 JES2018のエピネット日本版手術部版の集計では、「縫合針」の針刺し切創割合は46.5%(819件)で、発生状況は「患者に使用中(45.3%)」、「器具を手渡ししている時(15.4%)」、「器材の使用と使用の合間(13.3%)」に多く、「器材を使用後廃棄するまでの間(3.5%)」、「ハンズフリーで器具を受け取りしている時の受傷(2.8%)」でも報告されていた。
 縫合針による針刺し切創対策は、廃棄のみに焦点をあてた予防策ではなく、縫合中や廃棄するまでの対策がより効果的かもれない。 縫合針による受傷者の職種や他者が持っていた器材での受傷割合からも、縫合針を用いた医療行為を実施する使用者だけでなく、サポートする作業者との共同作業における予防対策を検討することが重要である。
※JES2018:Japan EPINet Surveillance 2018(2015~2017年度、3か年データ、82施設)

対策
  • 縫合針を使わずにすむ外科的処理がないか検討し、不要な鋭利器材の使用を少なくする。たとえば、皮膚縫合に鋭利器材でない縫合テープを用いるなどである。
  • 皮膚損傷のリスクを減少させる鈍的縫合針(鈍針, blunt-end suture needle) を利用する。鈍針は医療従事者に皮膚損傷を起すほど鋭利ではないが、筋肉や筋膜など、内部組織を刺通する程度の鋭さがある。
  • 縫合針の直接の手渡しを禁止し、術式によっては、ニュートラルゾーンを設けるハンズフリーテクニックを利用する。
  • 器材の受け渡し時には、必ず声かけをするようルール作りをする。
  • 手術時の器具台の上のルールを作成・周知(例:針のついた持針器は術野に向けて置かない、手術毎で置き場を統一する、動線上に鋭利器材を置かない、針カウンター・針シャーレの活用等)し、定期的に見直す。

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