6. 動脈血採血器具
リスク
 動脈血採血は、血液を吸い上げた中空針を使用するために血液媒介病原体の伝播リスクが高い医療行為の一つである。米国の研修医が針刺しでHIV に感染した事例、1999 年に日本で訴訟として取り上げられた看護師の職業性C 型肝炎ウイルス感染の事例は、動脈血採血に用いた器材が原因である。JES2018で集計された「動脈採血」時における針刺し切創は全体の3.7%(297/8,082件)であり、原因器材は「血液ガス専用の注射器の針(48.5%)」、「使い捨て注射器の針(41.8%)」で全体の9割を占め、翼状針(4.4%)による事例も報告されている。また、原因器材別の集計では「血液ガス専用の注射器の針」が全体の1.9%(169/8,733件)であった。
 血液ガス専用の注射針は、注射器から針を取り外すなどのいくつかの取り扱い手順が加わるため、取り扱い者の針刺しのリスクが高まる。発生状況は、「器材を患者に使用中している際(45.6%)」が最も多いが、「リキャップ時(12.4%)」、「数段階の処理をする際(11.2%)」、「器材の分解時(10.7%)」に多く発生している。安全器材による受傷の割合は72.6%であり、「安全装置の作動中(20%)」、「作動後(27.6%)」の受傷が合わせて半数近く報告されていることから、使用する安全器材の針刺し損傷防止機構を理解し正しく取り扱うことが求められる。
※JES2018:Japan EPINet Surveillance 2018(2015~2017年度、3か年データ、82施設)

対策
  • 動脈ラインからの採血時には、針を使わずに動脈血採取するニードルレスシステムを採用する。
  • 針先をゴムに刺し空気の混入を防止するタイプの血液ガス測定用シリンジは、取り扱い手順が受傷リスクを高めるため、使用しない。
  • 針刺し損傷防止機構付き血液ガス専用注射器/針を用いる。
  • 採取終了後すぐに止血できるよう準備をしてから、動脈採血を行なう。
  • 動脈採血後、針がむき出しのままで、共同作業者に血液ガス専用針/ 注射器を手渡ししない。

 
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