14. 鋭利器材専用(耐貫通性)廃棄容器
リスク
 廃棄容器に関連した針刺し切創はJES2018の集計では全体の9.3%(788/8,513件)報告されていた。そのうち、「廃棄容器に器材を入れる時(5.9%)」と最も多く、その他にも、「廃棄後不適切な容器から突き出ていた器材で(1.5%)」、「廃棄容器の投入口からはみ出していた器材で(1.0%)」、「廃棄容器の上や近くに放置してあった器材で(0.6%)」、「廃棄容器の投入口以外の部位から突き出ていた器材で(0.3%)」等で発生していた。
 院内の医療用廃棄物処理システムは、院内清掃業者を含む医療施設の職員全員における皮膚損傷のリスクに重大な影響を及ぼす。廃棄システムの安全性に影響を及ぼす重要な2大因子は、1) 廃棄容器の設置場所と数、2)その耐刺通性である。これらに加えて、廃棄容器の適切な管理も重要な要素となっており、容量の75%を超えた容器には決して廃棄されないよう管理される必要がある。
 廃棄容器に器材を入れる際の受傷職種は「看護師(65.3%)」および「医師/研修医(17.8%)」で8割以上を占めているが、「不適切な容器から突き出ていた器材での受傷」は「看護師(33.9%)」に次いで「清掃・洗濯・廃棄関連の業務士(25.2%)」、「看護助手(16.5%)」が多く、使用者が使用後すぐに適切な廃棄容器に廃棄されるシステムの構築が重要である。
 耐貫通性は廃棄容器の安全工学上重要である。ダンボール製などの廃棄容器は鋭利器材が突き抜ける可能性がある。廃棄容器の投入口も開放型バケツの形状は、受傷リスクが高い。
 また、廃棄容器に注射器から針を取り外すなどの分解機構がある場合、手順等が増え針刺しリスクを高めることも指摘されており、米国労働安全衛生局(OSHA)の規準では、使用後の針を取り外したり、曲げたりすることは禁忌とされている。
※JES2018:Japan EPINet Surveillance 2018(2015~2017年度、3か年データ、82施設)

対策
  • 鋭利器材専用の廃棄容器の設置場所を確認し、十分な数を用意する。必要に応じて、壁掛け式の鋭利器材専用廃棄容器を設置する。携行型廃棄容器などは、廃棄予定の器材の種類を考慮に入れてその大きさを検討する。
  • 病棟に廃棄容器を持参しやすいように、カートに廃棄容器設置場所を固定するなどの工夫をする。
  • 採血が頻回に行なわれる中央採血室等の高受傷リスク作業場所は、作業者が作業・廃棄を行いやすいように、作業環境を整え廃棄容器を設置する。
  • 院内で鋭利器材が利用される個所を点検し、廃棄容器が十分利用されやすい環境になっているか評価する。
  • 院内で廃棄物の取り扱いに関するルール作りと廃棄手順を確立し、分別処理方法について職員に周知する。
  • 廃棄容器は容量の75%以上になる前に交換する。廃棄容器への鋭利器材の押し込みなどの作業は避ける。
  • 保健所の医療監査の際に、リキャップされている器材がないか廃棄容器内が確認されることがあるため、医療監査前に廃棄容器をひっくり返してリキャップされている器材がないか確認を行う医療従事者がいることがある。一度捨てた血液・体液が付着した鋭利器材は、廃棄容器から絶対取り出してはならない。

 
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