3. 翼状針
リスク
 翼状針による針刺し切創事例はJES2018では約8.9%(778/8,733件)で3番目に多い原因器材である。針刺し切創を生じた翼状針の使用目的は、「静脈採血(79.8%)」、「注射器を用いた経皮的注射(10.5%)」、「静注、持続点滴含む末梢血管確保(4.5%)」の順に多い。
 発生状況は、「器材を患者に使用中(49.7%)」が最も多く、「不適切な容器やリネン等に紛れ込んでいた等の使用後から廃棄までの間(10.1%)」、「破棄ボックスに捨てる時(9.8%)」に針刺しが多発する。翼状針のキャップは小さいことから、リキャップ時に特に針刺しをおこしやすいが、近年、安全器材の普及に従って、リキャップ時の事例(5.4%)は減少している。採血に使用する翼状針は血液を吸い上げているため、針刺し時の血液伝播量が多く、感染リスクが高くなる。
 安全器材による針刺し切創は翼状針の90.2%を占める。翼状針の針刺し損傷防止機構の構造にはいくつかのタイプがあり、近年、タイプ別に針刺し受傷リスクが異なっている知見も報告されている。翼状針の安全器材による針刺し切創は、「作動中(24.2%)」、「作動後(25.6%)」にも発生しており、使用する安全器材の針刺し損傷防止機構を理解し正しく取り扱うことが求められる。今後も継続的に、翼状針の安全器材による針刺し切創発生の原因の追究と、針刺し損傷防止機構の構造の改善策が求められる。
 なお、2017年度の10万本使用あたりの翼状針による針刺し切創発生件数は3.8件であり、年々減少しており(JES2018)、針刺し損傷防止機構付き器材でない翼状針の受傷リスクより低く、安全器材の活用でリスクを減ずることが可能である。
※JES2018:Japan EPINet Surveillance 2018(2015~2017年度、3か年データ、82施設)

対策
  • リキャップ禁止を徹底し、使用後も翼状針を点滴のボトルに刺したり、使用後にラインをはさみで切ったりなどの行為は針刺し切創を生じやすいので禁止する。
  • 採血や静脈注射には、できる限り抜針と一連の動作で針先がカバーされる針刺し損傷防止機構付きの翼状針を使用する。
  • 針刺し損傷防止機構付き翼状針には、引き込み型、シールド付き翼状針などがあるが、使用する器材の針刺し防止機構を理解し、正しく取り扱われるように教育を行なう。
  • 採血管への注入時など移し変え時の針刺しリスクを減らすため、採血時はできる限り患者から真空管等へ直接血液を採取できる真空採血手法を採用する。
  • 翼状針を取り扱う時には、翼を把持して作業にあたる。
  • 作業をする際は、携行型廃棄容器を持参する。
  • 採血や血管確保時、抜針時には、あらかじめ固定テープ等を準備する。

 
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