電動ファン付呼吸用保護具(Powered Air-Purifying Respirator:PAPR)
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Ⅰ. PAPRの役割
 Purifying Respirator を略してPAPR と呼ばれること もあります(以下、PAPRとする)。PAPRは代表的に はタイトフィット面体タイプ(呼吸用保護具が装着者 の顔面に密着させる構造)やルーズフィットなフード タイプ(呼吸用保護具が装着者の顔面に密着しない構 造)があります。付属のバッテリーにより電動ファン を稼働させ、吸い込む環境中の空気を高性能なフィル ターでろ過して清浄な空気を供給するため呼吸がしや すくなっています。
 日常的に使用する場合やパンデミック時のように長期 間にわたって使用する場合にはN95 マスクの頻回使用 と比較するとコスト的にも劣らないと考えられます。
 PAPR の利点は前述のように呼吸がしやすいため作 業者への負担が少ないことの他にN95 マスクで必要 とするフィットテストが一般的には不要なことです。 N95 マスクは装着者の呼吸によりフィルターでろ過し た清浄な空気を吸気するもので吸気時にはN95 マス ク内が常に陰圧になるため、顔とN95 マスクが十分に フィットしていないとフィルターを通っていない空気 が漏れて入ってくる可能性があり感染リスクを高めま す。しかしPAPR は電動ファンの送風量により面体内 が陽圧となり、空気が漏れて入ってくることがなくな り安全が確保される呼吸用防護具です。
 最近、日本では装着者の呼吸に追随するブレス・レ スポンス方式の機能を有するPAPR が開発され、主流 になりつつあります。この機能によりさらに呼吸が楽 になるだけでなく、バッテリーの消費量が少なくなっ たため保護具の軽量小型化にも繋がりました。また、 警報ランプが附属されたり、バッテリー仕様の多様性 など技術革新が著しい保護具です。しかし、まだ、モー ター音や見栄えなどの医療現場の使用を想定しての改 良が求められます。
 PAPR は粉じん職場などの産業現場ではすでに普及 しつつありますが、医療機関においては、繰り返し使 用する際に表面上の病原体をどのように取り除きメン テナンスしていくかということについてはまだまだ確 立した方法はありません。現段階では表面をアルコー ルなどによって消毒することが考えられますが、フィ ルター部分についてはアルコールで拭き取るなどがで きないため、接触感染対策にも配慮が必要となります。
 PAPR の規格は日本ではJIS、米国ではNIOSH が定 めています。最近では規格の改正案が公表されました が、国際規格としてはまだ確定しておらず、審議中で す。また、日本では国家検定規格を制定する動きがあ りますが、まだ制定には至っていません。

Ⅱ. PAPRの必要な臨床場面
  • 結核病棟
  • 空気感染の可能性がある場
  • 新興・再興感染症などのパンデミック時のように長期に必要な場合

Ⅲ. PAPRの選び方
  • 作業に適した保護具を選択します。
  • メーカーにデモを依頼し、実際に装着してみます。

Ⅳ. 指導のポイント
  • 取扱説明書等に従います。
  • バッテリーの交換のタイミングに注意します。
  • 繰り返し利用するため表面の病原体の存在に留意します。

着脱方法
例:タイトフィット型
着け方

paprの着け方-1 paprの着け方-2

外し方

paprの外し方-1 paprの外し方-1


医療現場における電動ファン付呼吸用保護具(PAPR)の主な種類 JIS-T8157-2009 より
構 造 面体等の種類 利 点 欠 点
タイトフィット 半面形面体 ・装着が比較的容易
・送風が停止しても装着者の呼吸により病原体をろ過し浄化した空気を吸入できる
・市販のメガネが使用可能
・稼働は電池のため連続使用時間が限られる
ルーズフィット フード ・装着が比較的容易
・頭部や顔の保護
・市販のメガネが使用可能
・送風が停止すると空気が漏れ込む
・稼働は電池のため連続使用時間が限られる
JIS 規格では種類等さらに詳細に分類されているが、医療分野で販売されている種類を分類した。

 
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